都筑リビングラボ、これまでの歩み
- On 2021年3月31日
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病気や障がい、引きこもりなど、生きづらさ抱えながら暮らしている当事者が、いきいきと学び、働ける社会をつくることを目指して活動に取り組んでいる都筑リビングラボ。
今回は、都筑リビングラボで代表を務める鈴木仁さんに、組織発足の経緯やこれまでの活動について語っていただきました。社会の中で生きづらさを感じたという自身の経験も踏まえて、より良い地域づくりに尽力する都筑リビングラボの取り組みを振り返ってみましょう。
話し手:鈴木仁(都筑リビングラボ代表/ことぶき協働スペース)
ものづくりやデジタルテクノロジーを通じたエンパワメントと再チャレンジできる仕組みづくりをビジョンに掲げ、凹凸ある当事者として例え得意不得意があってもイキイキと学び・働けるために必要なアイデアを、都筑リビングラボに参画する地域の大学・企業・NPOなどや、ことぶき協働スペースと協働するみなさんと共に模索し、「自分ごと」としてパラレルキャリアを実践しています。
きっかけは2017年、リビングラボ創生会議
2017年3月、東京都市大学横浜キャンパスにてリビングラボ創生会議が開催され、横浜市内各地でリビングラボ先駆けとなる活動の展望などが語られました。
その中で、障害者支援をされている「NPO法人五つのパン理事」の岩永さんや、青少年支援の「アーモンドコミュニティネットワーク」の方々のこれまでの実践のなかから、弱さを抱え、行政の支援の狭間に取り残されがちな当事者の、目に見えにくい生きづらさと、まだ活かしきれていないが秘めたる可能性があるのではないかという地域の課題が提起されました。
都筑リビングラボの骨格はその課題解決に向けて、東京都市大学小池星多情報デザイン研究室が、情報可視化やコミュニティデザインの観点から研究もかねて協力する形で、同年同月に形成されました。
小池研究室にとっては、学生さんが地域に出て多様な大人と混じって研究し、学べる貴重な機会となっており、多様な属性の市民が顔を合わせてみんなで学び合えるという点は市内の他のリビングラボのビジョンにも通じる視点だと考えています。
その後、秘めたる能力はあるものの、繊細さや社会への不安から自ら生きづらさを感じ引きこもってきた私をはじめ、精神や発達を中心とした障がいを抱える当事者が、偶発的な出会いによって加入していったのです。
それ以来、都筑リビングラボでは傾聴と対話を軸に活動されてきた「アーモンドコミュニティネットワーク」さんの手法なども取り入れながら、参加者はみな立場・境遇の看板を一度おろし、一人ひとりのステークホルダーがそれぞれかけがえのない存在の1人としてお互いを尊重することを大切にしてきました。
誰ひとり社会から取り残されないための教育活動
地域の課題としては
- 様々なそういう困難を抱える人の社会参加・就労が限定的なこと
- 対価が充分に得られないことで、心のコンプレックス含め負の循環もあること
などがあり、フラットな関係性で幾度となく忌憚のない意見を交わすフューチャーセッションを繰り返して、議論を重ねたのです。こうして、都筑リビングラボが重視するビジョンや理念が固まっていきました。
そして2018〜2019年度には、対話で見えてきたビジョンを実践に移すべく、学びの場・居場所の創出を、ワークショップという形で実験的に試行しました。2019年度に加わった、ものづくり企業であるスリーハイの男澤さんらの力添えもあり、アーモンドコミュニティネットワークや、株式会社スリーハイが地域に開いているファクトリー&カフェ「DEN」などでワークショップを開催することができました。
これらのワークショップでは、多様な個性・特性を包容し、誰ひとり社会から取り残されないという視点を重視しながら、成果よりも体験(本人の気持ち)の感じ方に重点を置いています。
そして2020年度は、コロナ禍で学校の活動が制限されるなか、たまたま北山田小学校でデジタルを活用した学びへのニーズが生まれたことから、オンラインでのワークショップや、教育委員会を通じて「はまっこ未来カンパニープロジェクト」として、デジタルマップづくりの活動に挑戦することになりました。
デジタルマップづくりは、子どもたちがまわりの友達との比較で息苦しさを感じないよう、仮に弱さや苦手なことがあっても、恥ずかしがったり遠慮したりせず、好きなことにチャレンジしお互いの気持ちを気遣い合えるような学びを目指しています。
私自身、学校教育のプロセスでは思うように力を磨ききれず徐々に自信を失ってきた経験があるため、そういう視点をふまえた学びプログラムの考え方には、他にはない独自性のある視点が盛り込まれている自負があります。お互いを支え合えるような価値観を、デジタルマップづくりを通して学んでいってもらいたいと願っています。
今後の課題
今後の課題は、情報発信と広報力です。マルチタスクや不安、緊張に決して強くない私がセミナーなどでメインに登壇することも多く、上手く要点を伝えきれないこともあります。私はもくもくと作業することが得意で、その方が真価を発揮するタイプだということも感じています。
最終的に目指すところは、私たちのように生きづらさや凹凸を抱えていたとしても、イキイキと可能性を磨き、きちんとした対価をいただいて役割を担っていくことができる社会です。そのステップとして、多様性を包括した学びプロジェクトの共創から着手していこうと、都筑リビングラボは動き出しています。